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次代を担う子ども達のために
子ども達に今一番必要なのは、『親になるための教育』だと思います。すなわち、「将来きちんと子どもを育てられる親」にしてあげることこそ、 教育の根幹とすべきです。
  息子達が三人とも小学生だった頃、家族全員が居間に
集まっていた時のことです。テレビのニュースで、
「小4の我が子を殺害した母親」 の事件が報道されました。
事件の概要は、次のようなものでした。


  「夫が食道癌の末期と告知され、医者から余命1年と宣告された。
   小学4年の一人息子は、父親の身体の具合が悪いことを気にかけ、
   不安と苛立ちから不登校になった。そんな息子を不憫に思った妻は、
   『一人で育てる自信がない。せめて一番幸せな時に死なせてやろう』 と
   決心した。そして夫が留守の夜、妻は寝息を立てる息子の首に、
   電気コードを力いっぱい巻き付けた。その後、自らも包丁で
   腹を刺したが、死に切れなかった」


  ニュースを見終わったあと、私は息子達に問いかけました。


  「この母親をどう思う?」


  すると彼らは、「人を殺すのは良くない」 とか 「子どもが可哀相だ」 とか、
それぞれが年齢相応の感想を述べてくれました。
その一つ一つにうなずいたあと、私は次のように語りかけたのです。


  「お父さんもいつかは死ぬ。必ず死ぬんだよ。その時、この世に
   残せるものなんか何もない。でもね、私の血を、私の思いを継いだ
   子どもがこの世に残る。それが親として死んでいく時の、
   たった一つの救いであり、希望なんだ。愛する者をおいて先に
   死ぬのは辛いし、くやしい。でも、子どもという救いと希望があるから
   死んでいけるんだ。それが、死んでいく時の 『親の気持ち』 なんだよ」


  そして私は、涙ながらに続けました。


 「ところが、ニュースに出てきた母親は、もうじき病気で死んでいく父親の、
  たった一つの救いで希望だった 『大切な息子』 を殺してしまった。
  ひどい母親だと思う。絶対に許せない」


  もちろん、その母親には多少は同情します。しかし、
そこまでの気持は息子達には話しませんでした。


  そして最後に、こう伝えました。


  「子どもは親より先に死んではいけない。親より先に死ぬのは
   最大の親不孝。そして、親の死に水をとることが最大の親孝行。
   つまり、子どもにとって一番大切な仕事は、親より長く生きること。
   お父さんも、お母さんも、それが君達三人に対する一番の望みだよ」


  親は誰しも子どもには立派になって欲しい、皆の役に立つ人間に
なって欲しいと願います。もちろん私も、そう願っています。

  
  しかし、親の本音は、


  「子どもは宝、子どもは希望、子どもは未来。
   せめて親より先に死なないで欲しい」―。


それだけは、折に触れ、我が子に伝えておくべきだと思います。


(この文章は、小生が読売新聞山形県版に連載しているエッセイ
 「インク壺」 に掲載(2011.5.14)したものです。但し、一部改変してあります。)



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